便秘とは?|日数だけが基準ではありません
一般的に「3日以上排便がない状態」を便秘と呼びますが、これはあくまで目安です。毎日排便があっても、「便が硬くて出すのがつらい」「強くいきまないと出ない」「排便後もスッキリしない(残便感がある)」といった状態であれば、それは治療を検討すべき便秘と言えます。
便秘は、お腹の張りや腹痛といった不快な症状だけでなく、肌荒れ、食欲不振、肩こり、イライラなど、全身の不調につながることもあります。「いつものこと」と諦めずに、適切な対策で快適な排便習慣を取り戻しましょう。
こんな便秘は要注意!
すぐに受診を
以下のような症状を伴う便秘は、大腸がんなどの重大な病気が隠れている可能性があります。速やかに当クリニックにご相談ください。
- 急に便秘になった、または便秘と下痢を繰り返すようになった
- 便が急に細くなった
- 便に血が混じっている(血便)
- 激しい腹痛、吐き気、嘔吐を伴う
- 原因不明の体重減少がある
- 市販の便秘薬を色々試しても、全く改善しない
便秘の主な原因と種類
便秘は、原因によっていくつかのタイプに分けられます。タイプに合った治療を行うことが重要です。
機能性便秘
(大腸の働きの問題)
便秘のほとんどがこのタイプで、生活習慣と密接に関係しています。
弛緩性(しかんせい)便秘
- 原因:大腸の蠕動(ぜんどう)運動が弱まり、便を押し出す力が低下した状態。運動不足、水分・食物繊維不足、腹筋力の低下、極端なダイエットなどが原因。高齢者や女性に多い。
- 特徴:お腹が張る、便意を感じにくい。
けいれん性便秘
- 原因:ストレスなどにより自律神経が乱れ、大腸が過剰に緊張してけいれんし、便の通りが悪くなった状態。過敏性腸症候群(IBS)の一種。
- 特徴:腹痛を伴う、ウサギのフンのようなコロコロした便が出る、便秘と下痢を繰り返す。
直腸性便秘
- 原因:便が直腸まで来ているのに、便意を我慢する習慣などにより排便反射が鈍くなった状態。
- 特徴:便意を感じにくい、残便感がある。
器質性便秘
(大腸の形の異常)
- 原因:大腸がんや大きなポリープ、炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎など)、手術後の癒着などによって、腸管が物理的に狭くなっている状態。
- 特徴:このタイプの便秘に、安易に市販の下剤を使うと腸閉塞などを起こす危険があり、原因疾患の特定と治療が最優先されます。
便秘の検査と治療
まず、詳しい問診で症状や生活習慣についてお伺いします。その上で、器質性便秘の可能性を除外するために、大腸カメラ検査を行うことが非常に重要です。大腸カメラ検査で腸に異常がないことを確認し、機能性便秘と診断された場合は、以下の治療を組み合わせて行います。
生活習慣・食事の改善
これが便秘治療の基本であり、最も重要です。
- 水分摂取:1日1.5~2リットルを目安に、こまめに水分を摂る。
- 食物繊維:野菜、果物、海藻、きのこ類などを積極的に摂る。水溶性(海藻、果物など)と不溶性(豆類、根菜など)をバランス良く。
- 発酵食品・油分:ヨーグルト、納豆などの発酵食品や、適度な油分(オリーブオイルなど)も効果的。
- 運動習慣:ウォーキングなどの適度な運動で、腸の動きを活発にする。
- 排便習慣:便意を感じたら我慢しない。毎朝決まった時間にトイレに行く習慣をつける。
薬物療法
生活習慣の改善だけでは効果が不十分な場合、薬物療法を行います。近年、様々なタイプの新しい便秘薬が登場しており、患者様一人ひとりの症状やライフスタイルに合わせた処方が可能です。
- 便を柔らかくする薬(酸化マグネシウムなど)
- 腸の動きを刺激する薬
- 腸からの水分分泌を促す薬
- 漢方薬
市販薬を自己判断で長期間使い続けると、かえって腸の動きが悪くなることもあります。効果がない場合は、専門医にご相談ください。
【Q&A】便秘について
食物繊維をたくさん摂っているのに、便秘が改善しません。
食物繊維には、便のカサを増やして腸を刺激する「不溶性食物繊維」と、便を柔らかくする「水溶性食物繊維」があります。けいれん性便秘の方が不溶性食物繊維を摂りすぎると、かえってお腹の張りや腹痛が悪化することがあります。この場合は、水溶性食物繊維(海藻、こんにゃく、果物など)を中心に摂るようにしてみてください。また、水分摂取が不足していると、食物繊維が腸内で固まってしまい逆効果になることもあります。
毎日排便がないとダメですか?
排便のリズムには個人差があり、「毎日出なければいけない」という決まりはありません。2~3日に1回でも、苦痛なくスムーズに排便があり、スッキリ感があれば問題ありません。回数にこだわりすぎず、ご自身の「快適な排便」を目標にしましょう。