- ピロリ菌とは胃の中に棲みつく特殊な細菌
- ピロリ菌感染の症状
- ピロリ菌が引き起こす主な病気
- ピロリ菌の検査は胃カメラ検査が基本です
- ピロリ菌の治療(除菌療法)
- ピロリ菌検査・除菌の費用について
- 【Q&A】ピロリ菌について
ピロリ菌とは胃の中に棲みつく特殊な細菌
ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ菌)は、強酸性の環境である胃の中に生息できる特殊な細菌です。胃酸を中和する酵素(ウレアーゼ)を出すことで、自身の周りにアルカリ性のバリアを作り、胃の中で生き延びています。
主に衛生環境が十分に整っていなかった時代に、井戸水などを介して幼少期(5歳頃まで)に感染すると考えられています。
そのため、特に50歳以上の方で高い感染率が報告されています。現代の日本では感染率は低下していますが、親から子への食べ物の口移しなどによる家庭内感染も指摘されています。
ピロリ菌感染の症状
症状がないからこそ要注意
ピロリ菌に感染しているだけでは、ほとんどの場合、自覚症状は現れません。
しかし、症状がないからといって安心はできません。ピロリ菌は胃の粘膜に持続的な炎症を引き起こし、気づかないうちに様々な病気の原因となります。
胃もたれや腹痛などの症状は、ピロリ菌が引き起こした胃炎や胃潰瘍などによって生じている可能性があります。
ピロリ菌が引き起こす主な病気
ピロリ菌感染を放置すると、以下のような深刻な病気を引き起こす可能性があります。
除菌治療は、これらの病気の予防・治療に繋がります。
慢性胃炎・萎縮性胃炎
ピロリ菌感染者のほぼ100%に慢性胃炎が起こります。これが長期化すると、胃粘膜が痩せて萎縮性胃炎となり、胃がんの温床となります。
胃がん
日本の胃がん患者の99%はピロリ菌感染者であると報告されており、ピロリ菌感染は胃がんの最大のリスクファクターです。
胃潰瘍・十二指腸潰瘍
潰瘍の患者様の多くがピロリ菌に感染しており、除菌することで再発率を劇的に下げることができます。
その他
胃MALTリンパ腫(胃にできる血液のがんの一種)、特発性血小板減少性紫斑病(血が止まりにくくなる病気)、鉄欠乏性貧血など、胃以外の病気との関連も明らかになっています。
ピロリ菌の検査は
胃カメラ検査が基本です
ピロリ菌の検査には、胃カメラを使う方法と使わない方法があります。
保険診療でピロリ菌の検査・除菌治療を行うためには、原則として事前に胃カメラ検査を受け、ピロリ菌による慢性胃炎などの診断が確定している必要があります。

胃カメラを用いる検査
(診断と同時に実施可能)
- 迅速ウレアーゼ試験:採取した胃粘膜を特殊な試薬に入れ、色の変化でピロリ菌の有無を調べます。検査当日に結果が分かります。
- 鏡検法:採取した組織を染色し、顕微鏡で直接ピロリ菌の存在を確認します。
- 培養法:採取した組織を培養して菌を増やし、診断します。薬剤感受性試験(どの抗生剤が効くか)も調べられます。
胃カメラを用いない検査
(主に除菌後の判定に使用)
- 尿素呼気試験:検査薬を服用し、服用前後の呼気(吐く息)を調べて診断します。最も精度の高い検査で、主に除菌治療の効果判定に用いられます。
- 便中抗原検査:便の中にピロリ菌の抗原(菌の一部)がないか調べます。
- 抗体測定:血液や尿で、ピロリ菌に対する抗体の有無を調べます。過去の感染でも陽性になるため、現在の感染を証明するものではありません。
ピロリ菌の治療(除菌療法)
ピロリ菌の除菌は、3種類の薬(胃酸を抑える薬1種類と、抗生物質2種類)を1日2回、7日間服用するだけです。
- 一次除菌:この最初の治療での成功率は約90%と非常に高いです。
- 二次除菌:一次除菌で除菌できなかった場合、抗生物質の種類を一部変更して再度7日間服用します。二次除菌まで行うと、97~98%の方で除菌に成功します。
除菌治療が成功したかどうかは、服薬終了から4週間以上あけて、尿素呼気試験などで判定します。
ピロリ菌検査・除菌の費用に
ついて
胃カメラ検査で「慢性胃炎」「胃潰瘍」「十二指腸潰瘍」などの診断を受けた方は、保険診療でピロリ菌の検査・除菌治療が可能です。
保険診療の場合(3割負担)
- ピロリ菌検査(迅速ウレアーゼ試験など):胃カメラ検査費用に含まれることが多いです。
- 除菌治療(一次・二次):診察料・薬剤費合わせて、約5,000~7,000円程度
- 除菌判定(尿素呼気試験):約1,600円程度
自費診療の場合
検診目的などで胃カメラ検査を行わずに検査・治療を希望される場合は自費診療となります。
費用についてはクリニックまでお問い合わせください。
【Q&A】ピロリ菌について
大人から大人へピロリ菌はうつりますか?
ピロリ菌は主に幼少期に感染が成立するため、免疫が確立した大人同士が、キスや食器の共用などで感染する可能性は極めて低いと考えられています。
日常生活において、過度に神経質になる必要はありません。
ただし、ピロリ菌に感染している親から、免疫が未熟な小さなお子様への口移しなどは、感染のリスクとなるため避けるべきです。
除菌治療の副作用が心配です。
除菌薬の服用中に、軟便・下痢、味覚異常、発疹などの副作用が出ることがあります。
多くは軽度で、服薬を中止すれば改善します。
ただし、ひどい下痢や発熱、腹痛、発疹が出た場合は、自己判断で服薬を中止せず、速やかに当クリニックにご連絡ください。
整腸剤を併用することで、副作用を軽減できる場合もあります。