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過敏性腸症候群(IBS)

過敏性腸症候群(IBS)とは

検査で異常がないのに不調が続く

過敏性腸症候群(IBS)とは|検査で異常がないのに不調が続く過敏性腸症候群(IBS: Irritable Bowel Syndrome)は、大腸カメラなどの検査をしても、炎症や潰瘍といった目に見える異常がないにも関わらず、腹痛や腹部の不快感を伴う下痢や便秘などの便通異常が慢性的に続く病気です。
命に関わる病気ではありませんが、「いつお腹が痛くなるか分からない」という不安から、通勤・通学、会議、試験、外出などを苦痛に感じ、QOL(生活の質)を著しく低下させてしまうことがあります。決して「気のせい」ではなく、適切な治療が必要な病気です。

脳腸相関とは

脳と腸はつながっている

脳腸相関とは|脳と腸はつながっているIBSの発症には、「脳腸相関(のうちょうそうかん)」という、脳と腸の密接な相互関係が深く関わっていると考えられています。脳が感じた不安やストレスは、自律神経を介して腸の運動に影響を与え、腹痛や下痢などを引き起こします。逆に、腸の不調は、その情報が脳に伝わり、不安や抑うつ気分を増強させるという、悪循環に陥りやすいのが特徴です。

過敏性腸症候群の症状とタイプ

主な症状は、腹痛と便通の異常です。症状の現れ方によって、主に以下のタイプに分類されます。

下痢型

  • 突然の激しい腹痛と共に、水のような下痢が起こる。
  • 「また電車で痛くなったらどうしよう」といった予期不安が強い。
  • 比較的、若い男性に多く見られます。

便秘型

  • 腸がけいれんするように収縮し、便がスムーズに運ばれない。
  • ウサギのフンのようなコロコロした硬い便が出る。
  • 強くいきまないと排便できず、残便感がある。
  • 女性に多く見られます。

混合型

  • 下痢と便秘を数日おきに交互に繰り返す。
  • 症状の予測がつきにくく、日常生活への影響が大きい。

分類不能型(ガス型など)

  • 腹痛に加えて、お腹の張り(腹部膨満感)や、おならが頻繁に出る、お腹がゴロゴロ鳴るといった症状が目立つ。

過敏性腸症候群の原因

原因はストレスだけではない

IBSの明確な原因はまだ特定されていませんが、以下の要因が複合的に関与していると考えられています。

  • ストレス:最も大きな誘因・悪化要因。
  • 消化管の知覚過敏:通常では感じないような腸のわずかな動きやガスの刺激を、「痛み」として強く感じてしまう。
  • 消化管の運動異常:腸の動きが過剰になったり、逆に鈍くなったりする。
  • 感染性腸炎の後遺症:ウイルスや細菌による腸炎にかかった後、腸内環境が変化してIBSを発症することがある。
  • 腸内細菌叢の乱れ
  • 食生活の乱れ

過敏性腸症候群の検査と治療

過敏性腸症候群の検査と治療まず、症状を引き起こす他の病気(大腸がん、炎症性腸疾患など)がないことを確認するために、血液検査や大腸カメラ検査などを行います。これらの検査で異常がないことを確認した上で、症状の経過からIBSと診断します。
治療は、一つの特効薬があるわけではなく、生活習慣の改善、食事療法、薬物療法を組み合わせ、患者様一人ひとりに合った治療法を探していきます。

生活習慣の改善

規則正しい生活、十分な睡眠、適度な運動は、自律神経のバランスを整え、症状の改善につながります。また、ご自身の症状が「どのような状況で悪化するのか」を把握し、ストレスと上手に付き合う方法を見つけることも大切です。

食事療法

特定の食品が症状を悪化させることがあります。日々の食事内容と症状を記録し、相性の悪い食品を見つけ、避けることも有効です。近年では、「低FODMAP(フォドマップ)食」という、腸で発酵しやすい糖質を制限する食事法が、IBSの症状改善に有効であると注目されています。

薬物療法

症状のタイプに応じて、様々な薬を使い分けます。

  • 腸の運動を調整する薬
  • 便の硬さを調整する薬(下剤、下痢止め)
  • 腸の知覚過敏を改善する薬
  • 腸内環境を整える薬(プロバイオティクス)
  • 不安が強い場合には、抗不安薬や抗うつ薬が有効なこともあります。

【Q&A】
過敏性腸症候群について

この病気は治りますか?

IBSは、高血圧や糖尿病のように、体質的な要素が関わる慢性疾患です。そのため、「完全に治す」というよりは、「症状をコントロールし、日常生活に支障がない状態を維持する」ことが治療の目標となります。症状に波はありますが、適切な治療とセルフケアを続けることで、症状を上手にコントロールし、快適な生活を送ることは十分に可能です。焦らず、じっくりと病気と向き合っていきましょう。

周囲に理解してもらえず、つらいです。

IBSは、外見からは分かりにくいため、「気のせい」「怠けている」などと誤解され、つらい思いをされている方が少なくありません。一人で抱え込まず、まずはご家族など身近な方に、この病気の特性(脳腸相関など)を説明し、理解を求めることも大切です。また、当クリニックでは、患者様のつらいお気持ちに寄り添いながら、一緒に治療方針を考えていきますので、どんなことでもお気軽にご相談ください。